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【作品背景】これぞワンダーランド「不思議の国のアリス」(ルイス・キャロル)

イギリス文学

「どんなことにも教訓はある。 君がそれを見つけられるかどうかさ」
「どっちへ行きたいか分からなければ、どっちの道へ行ったって大した違いはないさ」

みなさん、こんにちは。めくろひょうです。
今回は、「不思議の国のアリス」(ルイス・キャロル)の作品背景をご紹介します。

あらすじ

土手で本を読んでいるお姉さんのそばで、アリスは退屈していました。そこに、チョッキを着た白ウサギが通りかかります。しかも、懐中時計を見て「まずい、遅刻だ!」とつぶやきながら。喋る白ウサギに興味津々のアリスは、後を追います。生垣の下にある巣穴に飛び込む白ウサギ。アリスも続いて飛び込みます。深い深い穴の底にあったのは、摩訶不思議な世界でした。アリスの冒険が始まる。

作品の詳細は角川文庫のHPで。

不思議の国のアリス
文庫「不思議の国のアリス」のあらすじ、最新情報をKADOKAWA公式サイトより。美しい原画の装丁で、装い新たに甦る、永遠の名作童話決定版!

チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン

ルイス・キャロルはペンネームで、本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンといいます。
1832年、イングランド北西部チェシャー州デアズベリーで生まれました。父親は数学の才能がありましたが、結婚によってその道を断念し(当時、大学の教職者は独身が条件でした。)、有力な聖職者となった人物でした。

Portrait of Lewis Carroll:
パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.

名門ラグビー校で学び、オックスフォード大学クライスト・チャーチ・カレッジに進学。優秀な成績で卒業します。卒業後は、同校の数学講師として仕事をしながら、詩や物語を執筆して雑誌に寄稿していました。
学寮長として赴任してきたヘンリー・リデルとの出会いが、その後のキャロルの運命を変えることになります。
1865年、ヘンリー・リデルの娘アリスにプレゼントした物語をベースにした「不思議の国のアリス」を出版。順調に売り上げを伸ばし、作家としての地位を固めます。

Image by Samuele Schirò from Pixabay

1872年、続編の「鏡の国のアリス」を出版。
作家として多忙をきわめながら、クライスト・チャーチ・カレッジの教職も続け、数学者として論文や著書を発表しました。
1898年姉妹の家に滞在中に、インフルエンザから併発した肺炎で亡くなりました。65歳でした。

地下の国のアリス

キャロルは、学寮長としてクライスト・チャーチ・カレッジに赴任してきたヘンリー・リデルと懇意になりました。ヘンリーの娘たち、ロリーナ、アリス、イーディスの三姉妹とは、とても仲良しだったそうです。

Image by Willgard Krause from Pixabay

1862年7月、キャロルは、リデル三姉妹、友人ロビンソン・ダックワースとともに、アイシス川(テムズ川のオックスフォードから上流)へピクニックに出掛けました。
ボートで5マイルの距離を移動する間に、キャロルは姉妹たち、中でもお気に入りだった次女アリスのために、「アリス」という名の女の子が主人公の物語を即興で作り、聞かせました。アリスはその話を気に入って、本にして欲しいと頼みました。キャロルは、文章を手書きし、挿絵を描き、装丁をして、「地下の国のアリス」とタイトルをつけ、アリスにプレゼントしました。

Image by Maurice LE BAIL from Pixabay

アリスへのプレゼント本を作っている間にキャロルは、児童文学の人気作家ジョージ・マクドナルドに「地下の国のアリス」の原稿を見せました。原稿を読んだマクドナルドは、作品として出版するよう勧めてくれました。キャロルは「地下の国のアリス」にエピソードを書き足し、「不思議の国のアリス」として完成させます。画家ジョン・テニエルによる挿絵が追加され、1865年、出版されました。

アリスに対する評価

「不思議の国のアリス」とその続編「鏡の国のアリス」は、新しい児童文学の在り方を示した作品として評価されています。ピューリタン(イングランド国教会の改革を目指したプロテスタント。清教徒。)の影響もあり、当時のイギリスでは、児童文学には、子供に信仰心や道徳心を育むべく「教訓」が含まれていました。

Image by Emily_WillsPhotography from Pixabay

そのような社会環境の中、「教訓」を含まず、純粋に子供を楽しませるために書かれた「不思議の国のアリス」の出版は、画期的な出来事でした。作品の中にたびたび登場する言葉遊びやパロディは、読者である子供たちを楽しませるととも、教訓主義に対する痛烈な批判が込められていたのです。

アリスとキャロル

女王様、チェシャ猫、三月ウサギ、海ガメモドキなどなど、強烈な個性を持ったキャラクターたちについて。
言葉遊びによる、パロディやナンセンスの表現について。
敬虔なキリスト教徒でありながら、自分の考えと教会の方針が一致しないジレンマを抱え続けたといわれる宗教観について。
少女の写真を撮りまっくた、ちょっと怪しいカメラマンとしての一面について。

Image by tookapic from Pixabay

「不思議の国のアリス」と著者ルイス・キャロルには、数え切れないほどの研究がなされています。

みなさんは、アリスとキャロルの、どこに魅力を感じますか?

以上、めくろひょうでした。ごきげんよう。

角川文庫
ジョン・テニエルによるオリジナル挿絵

新潮文庫
金子國義のカラー挿画

特別展アリス― へんてこりん、へんてこりんな世界 ―
森アーツセンターギャラリーで10月10日(月)まで開催中

特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界― 公式サイト
ふるさと英国から、160年にわたる「アリス」の文化現象をたどる初の大規模展「特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界―」公式サイト。2022年、東京と大阪で開催。

映像化作品

「ふしぎの国のアリス」(1951年・アメリカ)
ご存知、アリスのイメージを決定づけたウォルト・ディズニー・プロダクション製作のアニメーション映画。

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「アリス」 (1988年・チェコスロヴァキア)
監督:ヤン・シュヴァンクマイエル
出演:クリスティーナ・コホトヴァー(アリス)
アリス以外はすべて人形、かつCGを使用していないコマ撮り撮影。シュールでグロテスクな映像。

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「アリス・イン・ワンダーランド」(2010年・アメリカ)
監督:ティム・バートン
出演:ジョニー・デップ ミア・ワシコウスカ
不思議の国への冒険から13年。19歳になったアリスが再び不思議の国を訪れる。
「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」をベースに、後日談的なストーリーとして再構成。

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