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【作品背景】おじさんにこそ読んで欲しい「あしながおじさん」(ウェブスター)

アメリカ文学

おじさんにこそ読んで欲しい、健気でチャーミングな女の子ジュディの成長とピュアな恋の行方。

みなさん、こんにちは。めくろひょうです。

「あしながおじさん」著:ジーン・ウェブスター 訳:土屋 京子(光文社古典新訳文庫)

の作品背景についてお話します。

あらすじ

孤児院で暮らしていたジュディは、匿名のパトロンから大学進学の資金援助を受けることに。ただし援助の条件として「学生生活の様子を手紙で送る」こと。パトロンを「あしながおじさん」と名付けたジュディは、文才を発揮し、日常生活の中で感じたこと、思ったことを、豊かな感性で手紙にしたため、送り続ける。やがて、ある男性からプロポーズを受けるが、孤児院出身であることを告げられず、拒絶してしまう。あしながおじさんに悩みを打ち明けると、「直接会って話を聞こう」と返事が。初対面を果たすべくジュディはニューヨークに向かったが。

作品の詳細は、光文社古典新訳文庫のサイトから。

作品紹介文が読書欲をそそります。

あしながおじさん - 光文社古典新訳文庫
孤児のジュディは文才を認められ、ある匿名の紳士の援助を受けて大学に通わせてもらえることに。かつてなくリアルで楽しいジュディが新訳で甦る!

セブンシスターズ

作品では、主人公ジュディの大学生活が描かれていますが、まずは、当時の大学とはどのようなものだったのかに触れていきます。

セブンシスターズ(Seven Sisters)とは、アメリカ東部に創設された名門私立女子大7校の総称です。

  • マウント・ホリヨーク大学 1837年創設
  • ヴァッサー大学 1861年創設
  • ウェルズリー大学 1870年創設
  • スミス大学 1871年創設
  • ラドクリフ大学 1879年創設
  • ブリンマー大学 1885年創設
  • バーナード大学 1889年創設

いずれも伝統のある大学で、多くの女性リーダーを輩出してきました。ラドクリフ大学はハーバード大学と合併、ヴァッサー大学は男女共学になりましたが、セブンシスターズという呼び名は現在でも生き続けています。

パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.

7校のうち4校がマサチューセッツ州にあり、他の3校も北東部にあります。これはアメリカにおける大学の歴史が、初期植民地であった東海岸から始まったことに由来します。

セブンシスターズは、創立当初から「男子と同等の」大学教育の実践を志し、少数精鋭(学生数1,000~2,000人程度)のリベラルアーツカレッジとして、社会に出てリーダーとして活躍できる女性を育てることを目的としていました。

この作品の著者であるジーン・ウェブスター(Jean Webster, 1876年7月24日 – 1916年6月11日)は、 ニューヨーク州生まれで、地元の寄宿制学校で学び、セブンシスターズのひとつであるヴァッサー大学に進学します。この時の体験をもとに、この作品は書かれています。

手紙をベースにした魅力的な小説であるとともに、20世紀初期アメリカにおける女子大生の生活を記録した貴重な資料でもあります。

アメリカ児童文学と孤児

主人公ジュディは幼少期を孤児院で過ごします。なぜ孤児が主人公なのか、アメリカにおける児童文学と孤児について触れていきます。

19世紀から20世紀初頭にかけて、アメリカの児童文学では、孤児が主人公の作品が数多く出版されます。

代表的な作品は、

  • 1878年 トム・ソーヤーの冒険
  • 1885年 ハックルベリー・フィンの冒険
  • 1886年 小公子
  • 1900年 オズの魔法使い
  • 1905年 小公女(親と離別)
  • 1911年 秘密の花園
  • 1912年 あしながおじさん

みなさんご存知の有名な作品ばかりですね。あらためて、そういえば主人公は孤児だったと気づかされます。

孤児という境遇は、主人公の成長が描きやすい、また、同情をひきやすいということもあったのでしょう。

しかし、当時のアメリカは、南北戦争終戦後の混乱やヨーロッパからの移民増加など、社会が不安定であり、残念ながら親を失い孤児となる子供たちが増えていた事情もあります。

そもそもアメリカという国自体が、イギリスから独立した新しい国で、ヨーロッパの歴史や文化と決別し、不安定ながらも自由を持つ国であるという意味で「孤児」だと考察する研究者もいるようです。(イギリスの話ですがハリー・ポッターも孤児ですね)

あしなが

原題の「Daddy-Long-Legs」とは、蜘蛛に似ているけど蜘蛛ではない脚の長い虫を指すようですが、「あしながおじさん」というタイトルに翻訳したのは遠藤寿子さん(岩波文庫1933年刊)。秀逸ですね。

クスッとしたり、ハラハラしたり、とにかく楽しませてくれる主人公ジュディの手紙。

児童文学と位置付けられていますが、おじさんにこそ是非読んで欲しい

そして、ほっこりして欲しい。そんな作品です。

以上、めくろひょうでした。ごきげんよう。

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