マイフェアレディ『ピグマリオン』(著:バーナード・ショー)の作品背景

イギリス文学

こんにちは。めくろひょうです。

わずか100年前。イギリスにおける階級社会・女性差別とは。

今日は、

「ピグマリオン」著:ジョージ・バーナード・ショー 訳:小田島恒志 (光文社古典新訳文庫)

の作品背景についてお話します。

あらすじは、光文社古典新訳文庫のサイトから。

作品紹介文が読書欲をそそります。

ピグマリオン | 光文社古典新訳文庫
強烈なロンドン訛りを持つ花売り娘イライザに、たった6カ月で貴族のお嬢様のような話し方を身につけさせることは可能なのだろうか。言語学者のヒギンズと盟友ピカリング大佐の試みは成功を収めるものの……。

ピグマリオン

そもそもタイトルになったピグマリオンというのは、ギリシア神話に登場する王様のこと。

現実の女性に失望したピグマリオンは、理想の女性像の彫刻を作り、その彫刻に恋してしまったらしい。

そこから「ピグマリオンコンプレックス(「人形偏愛症」)」という言葉が生まれたとか。

階級は発音でわかる

「Hello」をどのように発音するかで、その人の生まれや育ちがわかってしまうそうです。つまり、英語の発音やアクセントと階級が密接に結びついているのが、イギリス英語の特徴。

イギリスは、言わずと知れた階級社会で、ざっくり言うと、労働者階級、中産階級、上流階級の3つに分類されます。イギリスでは、この階級ごとに、住む場所や買い物をする店、仕事帰りに立ち寄るパブ、進学する大学や購読する新聞などが異なっているようです。

イギリスに詳しい方、現在でもこの名残はあるのでしょうか?私自身がロンドンに旅行した際には、当然ながら、全くわかりませんでした。

中でも、「発音」は明らかに違っていて、その人がどの階級なのか、すぐにわかってしまうとのこと。

イギリスが誇る名門校オックスフォード・ケンブリッジ両大学関係者が使用する英語である「オックスブリッジ英語」は、文法や語彙全般にわたって特徴があり、発音については、「オックスブリッジ・アクセント」と呼ばれていて、伝統的な標準発音とされているようです。国営放送BBCで使われる英語も、これに準ずるとのこと。

イギリス社会が、人の生まれや育ちなどの背景を、発音で判断することを示すエピソードがあります。

元首相であるサッチャー氏は、商家の生まれ。つまり、中産階級出身でありながら、オックスフォード大学に進学した人物です。

そのため英語の発音にコンプレックスを持っていて、個人教授について発音を徹底的に矯正したそうです。

サッチャー氏が所属していた保守党は、上層中産階級や上流階級を支持基盤としていたため、どうしても自分の立場にふさわしい発音を身につけなければならなかったのでしょう。

ちなみに、イギリスの人気俳優ヒュー・グラント氏はオックスフォード大学卒で、発音は「オックスブリッジ・アクセント」。

彼の出演している作品では「ノッティングヒルの恋人」や「ラブアクチュアリー」が好きです。発音を意識しながら、もう一度観てみたいと思います。

女性差別

イギリスでは、
・1882年まで、結婚した女性に財産権が認められなかった。
・女性参政権が行使されたのは1918年。(但し、30歳以上の戸主のみ。その条件が撤廃され、男女平等の普通選挙権になったのは、10年後の1928年。)

「(財産を持っている)父親や夫に面倒を見られている身なのに、なぜ選挙権が必要なのか」という考えが堂々とまかり通っていたようです。

この時代の女性たちは「自立して生きていくことが不可能」だったのです。

その制度が、大きく変化する契機になったのが、第一次世界大戦です。男性が戦場に狩り出されていった結果、不足した労働力を女性が補うことになりました。その結果、女性たちは、男性と遜色なく仕事ができることに自信をもち、女性の社会進出が大きな流れになっていきました。

さて、女性たちが労働で得た賃金はどうなるのでしょうか?

従来であれば「父親や夫の管理」でしたが、不幸にして父親や夫が戦争で亡くなってしまうことが想定されます。つまり「女性も財産権を持ち、自分の賃金で生活できるようにする」しかなかったのです。

女性が、男性と同等の権利を得るためには、社会的な義務を引き受けることが前提です。つまり「男性と同等に仕事ができるから自分たちも財産権が欲しい」「財産権を得たら納税等の社会的義務を果たす」ことによって、男女平等を勝ち取っていくのです。

マイ・フェア・レディ

「ピグマリオン」というタイトルは知らなくても、「マイ・フェア・レディ」というタイトルは、みなさんご存知かと思います。
ジュリー・アンドリュースによるミュージカル版、オードリー・ヘップバーンによる映画版。
いずれも、この「ピグマリオン」が原作です。

但し、原作とミュージカル版・映画版は、最も重要なエンディングが異なります

著者であるバーナード・ショーが描いたエンディングは、
芝居初演当時の上述のような社会情勢をふまえて、イギリスにおける階級社会や女性の自立といったテーマを包含しています。

異なるエンディングが設定されたミュージカル版・映画版とも、バーナード・ショーの死後に上演・上映されています。

みなさんは、どちらがお好みですか?

おまけ

ノーベル賞(文学賞)とアカデミー賞(映画版「ピグマリオン」脚色賞)の両方を受賞した人物は、現在のところバーナード・ショーだけ

「ピグマリオン」(字幕版)はAmazonプライムビデオで観ることができます。

以上、めくろひょうでした。ごきげんよう。

コメント