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【作品背景】清教徒社会における不義「緋文字」(ホーソーン)

アメリカ文学
Photo by Zoltan Tasi on Unsplash

ピューリタン社会における不義密通。不倫相手の子を産んだヘスター・プリンは、決して父親の名を明かそうとはしなかった。

こんにちは。めくろひょうです。

「緋色」ってどんな色かご存じですか?

緋色(ひいろ)は、植物のアカネの根を原料とする茜染の一種で、濃く暗い赤色を茜色というのに対して、最も明るい茜色を緋色という。

wikipedia

今日は、

「緋文字」著:ナサニエル・ホーソーン 訳:小川高義 (光文社古典新訳文庫)

の作品背景についてお話します。

あらすじ

税関に勤務している私は、とある古い書類に目を留めた。そこに書かれていたのは、アメリカ入植初期のニューイングランドで起きた不義密通事件だった。消息不明の夫がいる女性ヘスター・プリンは、不倫相手の子を出産する。相手の名を明かさず姦通の罪を負ったプリンは、罪の証として「緋文字」を胸につけ、ひとり娘のパールとともに壮絶な人生を送ることになる。

作品の詳細は、光文社古典新訳文庫のサイトから。

作品紹介文が読書欲をそそります。

緋文字 - 光文社古典新訳文庫
幼子をかき抱いて刑台に立った女の胸には刺繍された緋色の「A」の文字。

ピューリタン

16世紀、イギリス国教会の考え方に異を唱え、改革をしようとしたグループがありました。それをピューリタン(日本語では清教徒)と言います。

ピューリタンの語源は、純潔を意味するPurity。

グループの中には教会を内部から改革しようとする派と、教会から離れようとする派(分離派)があり、分離派は、弾圧を受けます。

彼らは信教の自由を求めて、メイフラワー号に乗り、新世界(アメリカ大陸)を目指します。

2か月を超える苦難に満ちた航海の末、イギリスからの入植間もないニューイングランド(アメリカ東北部)にたどり着いた彼らは、後に「ピルグリム・ファーザーズ」と呼ばれるようになりました。

ピルグリム・ファーザーズ

ピルグリム・ファーザーズが到着したころのニューイングランドは厳しい冬を迎えており、入植者の半数近くが、寒さと病気のため死亡したとも。

近隣に居住していたネイティブアメリカンの助けを受け、トウモロコシ等現地の作物を栽培し生き延びたと言われています。

秋の収穫時には、彼らを招いて祝宴を開き、感謝の気持ちを伝えたそうです。これが現在の「感謝祭」の起源になりました。

当時の新世界への船旅は、航海の危険性だけではなく、莫大な費用も必要でした。

イギリスに先んじてアメリカ大陸への入植を進めていたスペインやポルトガルは、国の政策として実施していましたが、イギリスからの入植は、そもそも宗教的弾圧を受けていた人たちが中心だったため、国の政策ではなく、営利を目的とする民間団体に支援されていました。

調理器具、衣服、種子、工具、建材、家畜、武器、弾薬など、生活に必要な物を持ち込んだを彼らですが、初めてアメリカ大陸に持ち込んだとされているものがあります。

ビールです。出航時には400樽も積み込んでいたとか。

メイフラワー誓約書

ピルグリム・ファーザーズは新世界上陸前に船上で誓約を結びました。

自分たちはイギリス国王の臣民ではあるものの、いかなる政府組織にも属していないと考え、上陸後の秩序を維持し、揉め事が起こらないようにするためです。

メイフラワー誓約書」と呼ばれるこの誓約書は多数決を採用していて、後のアメリカ民主主義の基礎になったと言われています。

緋文字

このような宗教的背景、自主独立の気概を持った街で起きた「不義密通」事件。
主人公ヘスター・プリンの強さと、緋文字Aの重さ。是非、堪能してみてください。

以上、めくろひょうでした。ごきげんよう。

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