【作品背景】貴方はどう読みますか?「変身」(カフカ)

ドイツ文学
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みなさん、こんにちは。めくろひょうです。
今回は、「変身」(フランツ・カフカ)の作品背景をご紹介します。

あらすじ

朝、目が覚めたとき、自分が毒虫になっていることに気付くグレーゴル・ザムザ。最初は驚いたものの、淡々と日常生活を送る父母そして妹。金銭面で家族を支えていたグレーゴルの収入が途絶えたとき、家族の心に変化が。

作品の詳細は新潮社のHPで。

フランツ・カフカ、高橋義孝/訳 『変身』 | 新潮社
ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか……。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく

フランツ・カフカの人柄

チェコのプラハ出身ですが、当時のチェコはハプスブルク帝国の支配下で、ドイツ語が公用語だったこともあり、ドイツ語で作品を残しました。

わずか40歳で他界したカフカですが、生前のエピソードや日記・書簡が数多く残されていて、その人柄を垣間見ることができます。

また、いわゆる職業作家ではなく、ボヘミア王国労働者傷害保険協会プラハ局に勤めながら作品を書いていました。

何か親近感を感じませんか?

カフカの良き理解者・友人マックス・ブロート

カフカの作品の中で最も有名なものだと思われる中編小説「変身」ですが、発表当時に注目を集めることはありませんでした。

また代表的な作品である長編小説「審判」「城」「失踪者(アメリカ)」は、いずれも未完の作品であり、生前発表されることはありませんでした。

これらの作品群が陽の目を浴び、現在の世界的な評価を獲得するに至ったのは、学生時代からの友人であったマックス・ブロートが、カフカの死後、残されていた原稿を(カフカの遺言に背いて)整理し、作品として発表したからです。

「変身」の読み方

実存主義(意味や理由がなくても人間は存在する)文学、不条理(原因や理由がないにもかかわらず筋が通らないことが起こる)文学、文学に理解を示さなかった父親との確執、チェコで生まれドイツ語を話すユダヤ人である民族性等々、カフカについては様々な角度から研究されてきました。

「変身」については、哲学的アプローチに加え、「毒虫ってどんな虫」といった研究もあるほどです。ネットで検索すれば、多くの論文を読むことができますので、興味を持たれた内容のものを読んでみることをお勧めします。

私は研究者ではありませんので、シンプルに、物語を追ってみました。

一家の経済的大黒柱であるグレーゴルの収入が、彼が毒虫になってしまったことにより途絶えてしまいます。最初は途方に暮れてしまう家族ですが、やがて彼らの心に変化が。

重い話だと言われますが、カフカは笑いながら、「変身」の原稿を友人たちに読んで聞かせたというエピソードも残っています。

あまり肩肘張らずに読んでみてもいいのではないでしょうか。

そもそも「朝起きたら虫になっている」話ですよ。

少女の人形と手紙

カフカの生涯最後の恋人であるドーラ・ディアマントが、カフカの人柄が伝わる温かいエピソードを残しています。

カフカとドーラが公園を散歩していた時の事、泣いている小さな女の子に出会います。

「どうしたの?」
「お人形をなくしちゃったの」

カフカは素早く物語を組み立てます。

「お人形は旅に出たんだよ」
「どうして知ってるの?」
「お人形から私に手紙が来たからね」
「その手紙見せて」
「ごめん、家に置いてあって今は持っていないんだ。明日持ってくるよ」

家に帰ったカフカは、作品を書く時と同じ真剣さで手紙を書きます。
翌日、カフカは手紙を持って公園に行き、手紙を読んであげます。

「旅行して、知らない世界を見て、新しい友達を作りたいの。だからあなたのことが嫌いになったわけじゃないのよ。だから毎日何をしたかを報告する手紙を書きます。」

そしてカフカは三週間にわたって手紙を書き続け、少女に読んで聞かせたそうです。

少女を悲しませない結末をどのようにするか悩んだカフカは、人形を結婚させることにします。

人形は旅先で出会った青年と恋に落ち、森で結婚式を挙げ、ふたりで仲良く暮らしています。そんな結末にしたのです。

人形と再び会うことが出来ないとわかっても、もう少女は悲しみませんでした。

結核に冒され、余命いくばくもない晩年のこのエピソードは、「ブルックリン・フォリーズ」(ポール・オースター)に採り上げられています。

カフカの魅力

まだ10代だったグスタフ・ヤノーホは、父親の職場の同僚であるカフカと出会います。そして20歳も年長のカフカをしばしば訪ね、多くを語り合いました。

ヤノーホはこのときに交わされた会話の内容をもとに「カフカとの対話」を発表しました。この作品は、リアルなカフカの言動を知る貴重な資料となりました。

生前に発表された作品は「変身」と6冊の短編集のみで、知る人ぞ知るレベルの作家であったカフカですが、マックス・ブロートによって遺稿が整理・発表され、その後、サルトルやカミュといったフランス実存主義者に注目されたことにより、世界的評価を受けることになりました。

カフカに影響を受けた作家は今も世界中で活躍しています。

作品の魅力はもちろんですが、人と真摯に向き合う誠実さも、人々を魅了する要因なのかもしれません。

以上、めくろひょうでした。ごきげんよう。

現在、驚くべきことに、新潮文庫版は新刊で入手できないようです。一時的な品切れなのか、新訳を準備中なのか。

オーディオブックで楽しむこともできます。

安全ヘルメット生みの親

労働者傷害保険協会に勤めていたカフカは、仕事上、工事現場の視察もおこなっていました。その際、危険防止のため軍用ヘルメットを被っていたそうです。

ここから安全ヘルメットが普及し、カフカを安全ヘルメット生みの親とする説もあるそうです。

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