自然の力、その力を信じる子供たちの心。みなさんも、奇跡の目撃者になりませんか。
みなさん、こんにちは。めくろひょうです。
今回は、「秘密の花園」(バーネット)の作品背景をご紹介します。
あらすじ
イギリス植民地時代のインド。わがままいっぱいに育った少女メアリは、コレラの流行で、突然両親を失ってしまう。イギリス・ヨークシャーに住む、伯父・クレイヴンに引き取られるが、荒涼としたムーアの中に佇む屋敷が好きになれず、召使いたちとの仲も険悪に。庭で駒鳥と知り合い「秘密の花園」の存在を知ることになったメアリの心に変化が現れる。子守のマーサ、その弟の自然児ディコン、いとこのコリン。春の訪れが、「秘密の花園」に、そしてメアリたちに、奇跡を起こす。
作品の詳細は新潮文庫のHPで。
フランシス・イライザ・ホジソン・バーネット
1849年、イギリスの工業都市マンチェスターで生まれました。父親は、裕福な商人でしたが、バーネットが4歳の頃、若くして亡くなってしまいます。母親が家業を引き継ぎますが、折からの不景気で、生活は行き詰ります。
1865年アメリカ在住の伯父(母の兄)から誘いがあり、アメリカ・テネシー州ノックスヴィルに移りました。家計を助けるため、ふたりの兄とともに、バーネットは様々な仕事をこなし、小説の執筆も始めました。
徐々に作品が雑誌に掲載されるようになり、本格的に作家としての活動に取り組みます。精力的に多くの大衆小説を発表しました。
眼科医スワン・バーネットと結婚し、生まれた次男ヴィヴィアンをモデルにした「小公子」を1886年に発表。主人公セドリックの髪型やベルベットのスーツが「セドリック・スタイル」と呼ばれて流行し、イギリス・アメリカで大人気となりました。これを機に、大衆小説から児童文学へと軸足を移します。
後のヒット作「小公女」(1905年)の元となる「セーラ・クルー」を発表後の1898年、活動拠点をイギリス・ケント州グレイト・メイサム・ホールに移します。ここで出会った庭園が、後の作品に多大な影響を与えることになりました。
アメリカの市民権を取得すると、1908年、ニューヨーク州ロングアイランドのプランドームに移住しました。
1910年、「つむじ曲がりのメアリーさん」を大人向けの雑誌に掲載し、翌年、「秘密の花園」と改題して出版。発売当初の評判は、決して芳しくありませんでしたが、現在では児童文学の傑作として評価されています。
1924年、プランドームの自宅で亡くなりました。74歳でした。
グレイト・メイサム・ホール
「秘密の花園」のモデルになった庭園があります。バーネット自身が実際に住んでいたグレイト・メイサム・ホールの庭園です。
グレイト・メイサム・ホールは、イギリス・ケント州ロルヴェンデン村にあり、1720年代に建てられましたが、1893年、火災で大部分が焼失してしまいました。
バーネットは焼失を免れた部分を借りて、1898年から1907年にかけて、生活拠点としました。駒鳥に導かれて、荒れ果てた古い庭を発見したというエピソードが残っています。
バーネットは、この庭を手入れして生き返らせるとともに、「小公女」や「秘密の花園」のアイデアを得たそうです。
世の中に幸せをもたらす
「小公子」の主人公セドリックのモデルになった次男ヴィヴィアンは、母ベーネットの死後、彼女の姿を描いた「ザ・ロマンティック・レディ」を1927年に出版します。その中で、バーネットが執筆にあたって心掛けていたことが書かれています。
喜びを与えること、この世の中により多くの幸せをもたらすことを願って書き続けてきた。
二度の結婚と二度の離婚。ヨーロッパとアメリカをまたにかけ、パワフルな人生を送ったバーネットですが、作家として、作品によって、世の中に幸せをもたらすことを願って執筆を続けました。
幼い頃からバーネットは、「人々に親切にする事」と「小さな淑女である事を忘れない事」を母親から繰り返し教えられたそうです。その影響があったのかも知れませんね。
偉大なる自然の力
「秘密の花園」には、ヨークシャーにおける四季折々の美しい自然が、ふんだんに描かれています。
グレイト・メイサム・ホールの庭園に手を入れた経験をもとに、バーネットは、自然と触れ合うことが、どれだけ人々の心を癒すかを、作品のメインテーマに据えました。
大人の心ですら癒す力があるのですから、純真無垢な子供の心に与える影響は計り知れません。
自然の力、その力を信じる子供たちの心。みなさんも、奇跡の目撃者になりませんか。
以上、めくろひょうでした。ごきげんよう。
訳者の土屋京子女史は、「大人が読む作品」として翻訳したと、あとがきで述べています。
映像化作品
「秘密の花園 」(1993年・アメリカ)制作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ 監督:アニエスカ・ホランド 出演:ケイト・メイバリー
参考文献
「秘密の花園」におけるミルトン的主題~へそ曲がりのスコットランド女王から第二のイヴへ~ 野呂有子
「秘密の花園」とモダニズム 高田英和
バーネットの著作や年譜がまとめられているMidori’s RoomさんのHP
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