第二次世界大戦が激化する1943年秋。ニューヨークは平和だった。
みなさん、こんにちは。めくろひょうです。
今回はオードリー・ヘップバーン主演による大ヒット映画「ティファニーで朝食を」の原作である小説をご紹介します。
あらすじ
マンハッタンのアッパー・イースト・サイドにあるブラウンストーン造りのアパートメント。私は、自由奔放な女性ホリーと知り合う。裕福な男性からの貢ぎ物で、何不自由なく暮らしている彼女。しかし彼女の口から語られる言葉は、徐々に真実の姿を浮き彫りにしていく。
作品の詳細は、新潮文庫のHPで。
ティファニー
タイトルにあるティファニーは、みなさんご存知の高級宝飾品店を指しています。 1837年創業のアメリカを代表するブランドですね。
この作品の舞台である1943年には、すでにニューヨーク5番街に店を移転済みでしたが、カフェを併設していたわけではなく、「ティファニーで朝食を食べさせてもらうことが出来るくらい羽振りが良い」という意味で、タイトルに使われています。
(2017年にダイニングスペースがオープンし「ティファニーで朝食を」が現実になりました)
トルーマン・カポーティ
両親の離婚などにより、親戚の家を転々としながら幼少期を過ごします。学校で学ぶこともできず、ほぼ独学で勉強を続けました。
幼馴染だったハーパー・リーは後に女流作家となり、彼女の代表作「アラバマ物語」には、カポーティがモデルとなった人物も登場します。
17歳で人気雑誌「ザ・ニューヨーカー」のスタッフに採用され、19歳の時に発表した作品「ミリアム」でいきなりO・ヘンリー賞を受賞し「恐るべき子供」と評されました。
その後も精力的に作品を手掛け、1958年に発表した「ティファニーで朝食を」はベストセラーとなり、1961年映画化され、これも大ヒットしました。
私生活でも派手な話題を振りまき、ゴシップの常連だったそうです。そして、文化人のほか、上流階級の人々や海外の著名人とも、幅広い交友関係を持つようになりました。
冷血
1966年に発表した「冷血」は、実際に起きた殺人事件を徹底的に取材し、ノンフィクション・ノベルという新たなジャンルを打ち立てた作品です。ルポに留まらず、小説にまで仕立て上げ、ベストセラーとなりました。
その印税は200万ドルともいわれています。(当時は固定相場制だったので、1ドル=360円。360円×200万=7億2000万円!
「世界中の名士が集まった。見たこともないほど、豪華な顔ぶれだった。」と『ニューヨークタイムズ』が報じた仮面舞踏会をカポーティは主催しました。旧世界(ヨーロッパ)の魅力と新世界(アメリカ)のパワーが融合した20世紀最高のパーティとして評判を呼びました。
ドキュメンタリー映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』2020年11月公開
しかし、この後、カポーティはアルコールや薬物に溺れ、長編の作品を発表することなくこの世を去ってしまいます。遺作となる、上流社会のスキャンダラスな側面を描いた「叶えられた祈り」は未完に終わりました。
1943年のニューヨーク
第二次世界大戦中であったにもかかわらず、本土が戦場となっていなかったアメリカ、特にニューヨークは、クライスラー・ビルとエンパイア・ステート・ビルが既に竣工しており、世界でも屈指の華やか街になっていました。
以前は、ヨーロッパでの生活に苦しんでいた人々が、逃げるように大西洋を渡って来ていましたが、この頃になると、ヨーロッパの上流階級の人々も、戦火を逃れるためにニューヨークにやって来ました。そして、大戦下の殺伐とした祖国と対照的なニューヨークの姿に驚いたといいます。
この作品で描かれるニューヨークも、一部を除いて戦争の悲惨さは感じられません。それよりも、むやみに陽気だったり派手だったりする人々の様子が印象的です。
オードリー・ヘップバーンと村上春樹
現在新潮文庫ラインナップされている「ティファニーで朝食を」は村上春樹の訳です。
訳者あとがきで、
できることなら映画からはなるべく離れたところで、この物語を読んで楽しんでいただきたい
新潮文庫「ティファニーで朝食を」訳者あとがき
と記述しています。
それだけヘップバーンのイメージが強烈であるとともに、小説のホリーは、ヘップバーンの持つ印象とは違う人物像だということでもあると感じます。
この新潮文庫版「ティファニーで朝食を」には、表題作のほか、短編小説が3作品収録されています。なかでも「クリスマスの思い出」は、老女と少年の心温まる物語なので、是非この作品も読んで欲しいと思います。
以上、めくろひょうでした。ごきげんよう。
映画
「ティファニーで朝食を」オードリー・ヘップバーン主演1961年作品
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