【作品背景】お互いを大切に思う気持ち「賢者の贈り物」(O・ヘンリー)

アメリカ文学
Photo by freestocks on Unsplash
広告

貧しくても仲良く暮らす若い夫婦ジムとデラ。クリスマスプレゼントは何にしようかと考え始めるが。

みなさん、こんにちは。めくろひょうです。
今回は、「賢者の贈り物」(O・ヘンリー)の作品背景をご紹介します。

あらすじ

クリスマスが迫るニューヨーク。貧しい生活の中で、デラは愛する夫ジムにプレゼントを贈りたいと思うが、手元にあるお金はわずか1ドル87セント。お金を工面するため、デラは自慢の長髪を切って売ることにしたが。

作品の詳細は、新潮社のHPで。

O・ヘンリー、小川高義/訳 『賢者の贈りもの―O・ヘンリー傑作選I―』 | 新潮社
デラはおんぼろカウチに身を投げて泣いていた。明日はクリスマスというのに手元にはわずか1ドル87セント。これでは愛する夫ジムに何の贈りものもできない。デラは苦肉の策を思いつき実行するが、ジムもまた、妻のために一大決心をして

新潮文庫からは「O・ヘンリー傑作選1~3」の3冊が発行されています。
「賢者の贈り物」が収録されているのは傑作選1です。

ウィリアム・シドニー・ポーター

O・ヘンリーはペンネームで、本名はウィリアム・シドニー・ポーター。
アメリカ・ノースカロライナで、医者の子として生まれました。幼くして母親を亡くし、教育熱心な叔母によって育てられました。また、叔父の経営する薬局を手伝い、薬剤師の資格を得ます。

O. Henry (real name William Sydney Porter) in his thirties.
パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.

20歳の頃、持病の療養も兼ねて、テキサスに移住します。

1887年に結婚。薬剤師、銀行員、新聞記者など、職を転々とするかたわら、「The Rolling Stone」という雑誌を立ち上げますが、うまくいきませんでした。

1896年、以前働いていた銀行の金を横領したと嫌疑をかけられ、起訴されてしまいます。そしてあろうことか裁判所に向かう列車を途中下車し、家族を残して、中米に逃亡してしまいます。

妻危篤の知らせを受け帰国。保釈金を支払って妻の看病にあたりますが、残念ながら亡くなってしまいます。1898年、有罪判決を受けて服役しました。

服役中は、薬剤師の資格を持っていたことが幸いし、刑務所内の診療所で働きました。

囚人たちの話を聞くことで題材を仕入れ、次々と短編小説を執筆します。それを密かに新聞社や雑誌社に送りました。服役中に本も出版されています。

模範囚として減刑され、1901年に釈放されました。

釈放後、娘・義父母の住むピッツバーグで娘とともに過ごしますが、翌年、単身ニューヨークへ移住します。

20世紀初頭の時点でニューヨークは既に世界有数の大都市であり、前科者というレッテルを隠しやすく、また、作品の売り込みをしやすいと判断したのでしょう。

実際に新聞に毎週1作品を掲載するという契約を結ぶことができ、ニューヨークに暮らす人たちを題材に、多くの作品を世に送り出しました。

再婚を機にピッツバーグから娘を呼び寄せ、新しい生活をスタートさせますが、折りからの酒好きが災いし、肝硬変を発症、1910年、47歳で生涯を閉じました。

東方の三賢者

タイトルの「賢者の贈り物」は、新約聖書「マタイによる福音書」に記されている、東方の三賢者が生まれて間もないイエスに贈り物をしたエピソードから採られています。
三人の賢者たちは、それぞれ下記の贈り物をしたそうです。

メルキオールは「金」
 ゴールドです。王の象徴であり、ユダヤの王となることを意味する。
バルタザールは「乳香(にゅうこう)」
 貴重な香料。神の象徴であり、神として崇められることを意味する。
カスパールは「没薬(もつやく)」
 貴重な香料。ミイラの防腐剤として使われた。死の象徴であり、罪を背負って死ぬことを意味する。

この贈り物をした行為が、クリスマスプレゼントの起源と言われています。
ちなみに、「賢者」はラテン語で「magi」。英語の「magic」の語源です。

三賢者のエピソードについては、
ラビまるさんが、とてもおもしろく解説されています。興味のある方は是非ご覧ください。

【東方の三博士の贈り物】クリスマスプレゼントの由来にもなった聖書のエピソードをわかりやすく紹介

アメリカ西部・南部・東部

青年期をアメリカ西部テキサスで過ごし、アメリカ南部を経て中米諸国で逃亡生活と服役。熟年期はアメリカ東部の大都市ニューヨーク。
人々の生活や考え方が大きく異なる地域で過ごしたこと。さらに、獄中で様々な境遇の中を生き抜いてきた囚人たちとの交流。
彼の作品には、こうした要素がふんだんに盛り込まれています。

代表作のひとつとされる「最後の一葉」をはじめとするニューヨーク物が有名ですが、西部や中米の雰囲気が色濃く感じられる作品も数多く執筆されています。

貧しくても仲良く暮らす若い夫婦。
お互いを大切に思う気持ち。
そしてクリスマスがやってくる。
みなさん、この物語はハッピーエンドですよね?

以上、めくろひょうでした。ごきげんよう。

Amazon オーディオブックで聴くことが出来ます。

先日、日経新聞に記事が掲載されていたのをご覧になった方もいらっしゃるかも。
ゴールの流儀・人生100年の羅針盤「作家オー・ヘンリーどん底の獄中で文章修業」

作家オー・ヘンリー どん底の獄中で文章修業
晩節を全うするにはどうしたらいいのか。偉人や賢人の最期を描き、人生後半の生き方を考えるコラム「ゴールの流儀」。今回は作家のオー・ヘンリーを取り上げます。どん底の獄中生活。ところが彼は、塀の中で書く力を蓄え、20世紀初頭のニューヨークで、短編よりさらに短い掌編(しょうへん)小説を書きまくる。8年後、深酒がたたり40代であ...

より深くO・ヘンリーについて知りたい方は、上記記事にコメントを寄せている斎藤昇氏による著作がおすすめです。

コメント