【作品背景】28年2ヵ月19日「ロビンソン・クルーソー」(デフォー)

イギリス文学
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めげない男ロビンソン・クルーソーが無人島で過ごした期間は28年2ヵ月19日。冒険小説不滅の金字塔。

みなさん、こんにちは。めくろひょうです。
今回は、「ロビンソン・クルーソー」(ダニエル・デフォー)の作品背景をご紹介します。

あらすじ

イギリス生まれで、じっとしていられない性格のロビンソン・クルーソー。アメリカ大陸に向けて航海に乗り出すが、船は難破、ひとり無人島に流れ着く。めげない男のサバイバル生活が始まった。

作品の詳細は新潮社のHPで。

ダニエル・デフォー、鈴木恵/訳 『ロビンソン・クルーソー』 | 新潮社
一六三二年、英国に生れた船乗りロビンソンは、難破して絶海の孤島に漂着した。ここから二十八年に及ぶ無人島生活が始まった――。不屈の精神で鳥や亀を獲り、野生の山羊を飼い慣らしてバターやチーズを作り、パンまでこしらえてしまう。

ダニエル・フォー

姓フォーにDeを付け加えたダニエル・デフォーをペンネームとして執筆活動をおこないました。

ロンドンで生まれたダニエル・デフォーは、ジャーナリストとして生計を立てていましたが、徐々に政治の世界へ活動の場を移していきます。政敵を痛烈に批判したことにより、捕えられたこともあったようです。やがて、政府の広報官やスパイ活動に従事することになります。スコットランドに潜入し、イングランドとスコットランドとの橋渡し役を担いました。このデフォーの活動もあり、グレートブリテン王国が誕生(1707年)しました。

ダニエル・デフォー肖像画                     パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.

非常に活動的で困難にもめげない男だったデフォーが59歳の時(1719年)に出版した作品が、めげない男ロビンソンの冒険譚「ロビンソン・クルーソー」です。

長いタイトル

この作品が出版されたときのタイトルは、

「自分以外の全員が犠牲になった難破で岸辺に投げ出され、アメリカの浜辺、オルーノクという大河の河口近くの無人島で28年もたった一人で暮らし、最後には奇跡的に海賊船に助けられたヨーク出身の船乗りロビンソン・クルーソーの生涯と不思議で驚きに満ちた冒険についての記述」

ロビンソン・クルーソー初版

となっていて、そのままあらすじになってしまいますね。

ロビンソンクルーソー初版表紙 パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.

また、「本人の自筆」と記載されており、ロビンソン・クルーソー自身が執筆したという体裁になっています。

この作品はヒットし、後に続編が発表されました。

3つの視点

出版から300年以上たった現在でも世界中で読まれている「ロビンソン・クルーソー」ですが、どこに魅力があるのでしょうか。今回は3つの視点「冒険」「経済」「宗教」から魅力を探ってみます。

ロビンソンの冒険

やはり最大の魅力は、わくわくどきどきが連続する冒険物語であることでしょう。無人島に漂着したロビンソンは様々な冒険を繰り広げていきます。(無人島漂着前から既に冒険は始まっているのですが)多くの困難に見舞われながらも、創意工夫をこらし、豊かな発想力で対応していくロビンソンの姿勢が、読者を惹きつけるのでしょう。

Photo by Colin Watts on Unsplash

ロビンソンにはモデルとなった人物がいたという説があります。その人物の名はアレキサンダー・セルカーク。スコットランドの船乗りだった彼は、航海中に船長と揉め事を起こし、チリ沖合のマス・ア・ティエラ島(現在はロビンソン・クルーソー島と改名)に放り出されてしまいました。その島で4年以上自給自足の生活を送った体験談がロンドンにも紹介されて、デフォーが参考にしたというものです。

そのセルカークの生活を徹底的に調査し、調査結果を全世界に発表した探検家がいます。なんと日本人!探検家・高橋大輔氏です。実際に現地で自給自足の生活にチャレンジしながら、発掘調査を実施したそうです。

ちなみに、ロビンソンが無人島生活を送っていた頃、日本では鎖国が完成し、松尾芭蕉がおくのほそ道の旅に出ていました。

オノリコ・フロウ

マス・ア・ティエラ島はチリ沖、つまり太平洋側にある島で、ロビンソンが漂着したと思われる島ではありません。作品中の記述から推測すると、ロビンソンが生活したと思われる島は,カリブ海に流れ出るオリノコ川の河口近く、つまり大西洋側に位置しています。また、島からは西と北西に陸地が見えるので、「絶海の孤島」ではありません。カリブ海にある現在のトリニダード・トバゴ共和国周辺に設定されています。

オノリコ川は南米ベネズエラを流れる大河で、トリニダード・トバゴの南側で大西洋に注ぎます。この川に魅せられたSFの巨匠ジュール・ヴェルヌは、オノリコ川を舞台にした冒険小説「素晴らしきオリノコ川」(残念ながら日本語に翻訳されたものは出版されていないようです)を遺しています。

ジュール・ヴェルヌの代表作「八十日間世界一周」の作品背景はこちら

また1988年にリリースされ世界中で大ヒットした「オノリコ・フロウ」(エンヤ)は、みなさんもご存じではないでしょうか。オノリコ川の流れをSailAwayする歌詞は、ロビンソンが大西洋をSailAwayするイメージとつながっている感じがします。

ロビンソンの生活(経済活動)

ロビンソンの自給自足生活については、かのカール・マルクスによる「資本論」の中でも採り上げられています。他人のいない(社会性のない)環境における(自分のためだけの)労働(生産活動)について考える場合の最適なモデルケースらしいです。

自給自足において重要となる食・住について、ロビンソンは行き当たりばったりの対応をするのではなく、緻密な計算に基づいて実行していきます。これはロビンソンがイギリス中産階級(商工業者)の出身であり、経済活動の基本的な知識を持っていたために可能だったと思われます。

Image by Alexsander-777 from Pixabay

つまり18世紀初頭のイギリスにおける市民の経済活動レベルが、ロビンソンの持っていた知識から推測できることになります。この作品は小説であるとともに、当時の経済活動を研究する上で、貴重な資料でもあるということです。

ロビンソンの宗教観

ロビンソンは、決して信仰心が篤かったわけではありません。何か良いことが起こると神に感謝するのですが、時がたつと感謝の気持ちをあっさり捨て去ります。また、何か悪いことが起こると、神の無慈悲を嘆いたりします。

ただし「いつまでもふらふらしていないで中産階級の人間として堅実に生きよ」という父親の忠告に従わなかったことについては、罪の意識を持ち続けます。

Image by Free-Photos from Pixabay

信仰に対して無関心だったロビンソンが、島での生活を続けていく中で、思い悩み、少しづつ信仰に向き合っていく。デフォーは、聖書に触れることによって成長していく人物像を描きたかったのかも知れません。

イギリス中産階級の底力

子供向けにアレンジされたバージョンをお読みになったことのある方は少なくないかもしれません。しかし原作には、残酷な描写や差別的な表現が多々出てきます。ただの冒険譚に留まらず、イギリス中産階級の思考を辿る貴重な資料です。

海洋国家イギリスに生まれ、旺盛な冒険心を持っていたロビンソン。自ら危険な状況に突っ込んでいきますが、彼は、産業革命直前の中産階級の属する人間として、持てる知識と優れた経営感覚を発揮して、様々な困難を乗り越えていきます。

みなさん、ロビンソンと一緒にサバイバルしてみませんか?

以上、めくろひょうでした。ごきげんよう。

続編は岩波文庫「ロビンソン・クルーソー下巻」に収録されています。

こんなゲームがあるんですね。

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